悠々たる青蔵高原
中国南西部の青蔵高原は私の最も好きなところです。
作者/呉亜民
青蔵高原
青蔵高原とは中国の青海省、西蔵(チベット)自治区、四川省西部、雲南省北西部などのチベット族の居住地域を指します。この地域は複雑な地形のため、北西部は寒く、降雨量が少なく乾燥しており、南東部は降雨量が多く、温暖で湿潤という独特な気候が形成されています。この他にもさまざまな地域的気候と著しい立体気候帯もあります。
ここは“世界の屋根”と呼ばれる空高く聳え立つ雪山、とうとうと流れる大きな川、点在する静かな青い湖……、ここでは群れをなして草原を移動するヤクと羊、渓谷に漂う黄金色のハダカムギなど四季折々素晴らしい高原風景を見ることができます。ここに暮らすチベット族は、悠久な歴史と独特の宗教文化を持ち、厳かな古寺、素朴な歌と踊りは人々をうっとりさせます。
大ヒマラヤ
南にヒマラヤ山脈がそびえ、北にタングラ山脈が延々と続き、東は横断山脈、西には昆侖山、中央部にはガンディセ山脈が連なっています。中でもヒマラヤ山脈は地球上で最も高く、年代的にも最も新しい山系で、東西2400キロ、南北200ないし300キロもある広大な山脈です。この山系は高い山峰が林立し、8000メートル峰が11座、7000メートル以上の山峰が50余りもあります。このように高くそびえる山峰が一カ所に集まっているところは、世界の山岳地帯でまれに見る奇観と言えるでしょう。大きなピラミッドのようなチョモランマ峰は、群れを抜いており、独特の景観を呈し、世界最高峰となっています。
地形のせいか、高い峰の頂上には常に旗雲の現象が見えます。それはまるで白い雲が旗印のようにかかり、時には波のように激しく沸き立ち、空高く立ち昇る細長い炊煙や、疾駆する駿馬のようになったり、また女神のベールのようになったりします。これらはすべて雪山に珍しい風光と神秘的な色を添えています。
悠久なる歴史と文化
人々がチベット族地域の景観に憧れを抱くのは、チョカン寺、ポタラ宮、ギュゲの古城、ゾンサンの砦など、その悠久な歴史と独特の宗教文化を今に残す人文景観にあります。様々な風習に対する人文的理解を持って始めて、そのロマンチックで神秘的な色彩に富む景観を本当の意味で満喫することができるのです。
仏教の原点
チベット仏教はチベット族の伝統的文化の基礎で、政治、経済、教育、生活、伝統的民家はその他の文化の形態と同じように、独特な個性を持つものです。チベット族の民家はカラフルで、チベット南部と四川省カンズ(甘孜)地区の谷のようなくぼ地のトーチカ風家屋、北部の牧畜地区のテント、ヤルツアンポ江流域の営林区の木造建物はそれぞれ特色があり、アリ(阿里)高原では横穴式住居を目にすることさえあります。これらは仏教寺院を通じてのもので、住居、風俗、習俗などの諸方面に深い影響を及ぼしています。
華麗なチベット族
チベット族はおしゃれで、美を表現することに長じた民族です。男女問わず珊瑚、めのう、トルコ石、金、象牙などさまざまな装飾品を身につけ、服装と頭飾りのデザインは、地区ごとの違いはあっても、その模様と色づかいはみな、吉祥を願い美麗を尊ぶ(たっとぶ)ことで共通しています。昔は男女ともみな弁髪(べんぱつ)をしたものです。女性は、弁髪に色糸(いろいと)を編み入れ、頭上で巻きつけます。男性は弁髪を一本にするか、または髪が頭を覆う程度に短く切ります。服飾は華麗にして、中国各民族の中でも際立っています。
住居の装飾も非常に重んじ、室内の壁の上部に吉祥の象徴である模様が描かれているのをよく見かけます。また客間の内壁には青空・土地・海を象徴する青、緑、赤色3本の帯が描かれています。濃厚な宗教色に富むこと、これこそチベットの民家がその他の民族、民家と違う著しい特色と言えます。
服装と住居は、もちろんチベット族の優れた伝統文化の重要な一部となっています。
チベット族地域は世界中の旅行者、特にカメラマンにとって一つの神秘の楽園、或いは夢の楽園だと思われています。この地球上で一番高い高原はロマンチックな処女地とも云われ、いつも私はこの風土に誘われるのです。私はかれこれ数十回にもなりますが、あまりに広くて、まだ行っていないところは勿論、二度、三度と訪れたいところが沢山あります。
二〇〇六年夏 昆明にて
呉亜民
悠々たる青蔵高原写真集
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ほかの写真集
大地の彫刻-中国紅河のハニ棚田
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