●「文字の化石」を使うナシ族の文化 |
東巴古籍文献が世界記憶遺産に登録 |
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「東巴」は、もともとナシ族の言葉では、宗教儀式を司る祭司のことで「智者」を意味する。東巴文化は、納西族の一部族が、その長い歴史のなかで、自然への崇拝を民族の英知によって表現し、発展してきたものだ。そこには、東巴教をはじめ、独特の象形文字である東巴文字、音楽、舞踏、絵画などが見られる。それらは主に唐宋期に形成され、東巴教の各要素として守られ、東巴経のなかに記録され、今日まで伝えられている。玉泉公園にある“雲南省社会科学院麗江東巴文化研究所”では、老東巴と研究員の協力で経典の解読、記録作業が行われている。 ★東巴文字 東巴文字は、千年あまり前に表音的表現と表意的表現が入りまじって形成された、象形文字に似た独特のもので、「文字の化石」ともいう。 東巴文字で著した東巴経典は現在でも、中国内外に2万冊ほどが残っている。経典の内容は、宗教、民俗、歴史、文学、天文歴法、哲学など多岐にわたっている。古代ナシ族の「百科全書」と呼ばれるゆえんだ。今ではこのトンパ文字を読める人間もほとんどいなくなってしまい、トンパ文化研究所を中心に保存活動が行われている。 ★東巴教 東巴教は、ナシ族の原始的宗教に、当時吐蕃王国で隆盛を極めていたボン族教などを吸収して形成されたもので、太陽、月、星、山、水、風、火などの自然物を崇拝し、万物に霊性があると信じる。ただし東巴教には、統一された教義体系や組織、寺院などはない。神に仕えるものであり、また医学・芸術・工芸など、すべてに深い知識をもつ「東巴」は、普段は労働にいそしみ、必要とされる時には、楽器を奏で、経文を念じ、独特の舞踏で厄払いをして、冠婚葬祭を司る。特にその舞踏は、俗に「東巴踊り」ともいわれ、広く知られている。 納西族の東巴経典と象形文字は、解放前本来は植物学者のJ.F.ロックにより研究が進められ西欧に紹介された。特に仏教が伝わる以前にチベットで広く信仰されていてチベット密教(ラマ教)にも影響を与えた“ボン教”の原型を保持していることから、東巴経典はチベット密教の神秘性に関心を寄せる西欧人の注目を集めた。 |
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